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No. 92 (Tue)
dayline

Date 2006 ・ 02 ・ 07

『幸福な加害者と不幸な擬態者』memo.ver

奴はオレに会いにやってくる。
一年に三回はやってくる。そして十二月二十四日の今日、今日が一年のうち最後の三回目だ。オレは右手の中のものを強く握った。
奴と出会ってから三年目。合計九回チャンスがあったにもかかわらず、オレはあいつを殺せていない。しかしオレはこの滑稽な舞台を来年に持ち越す気はこれっぽっちもない。雪が降りしきる中、奴が毎回歩いてくる道を睨み付けた。もう一度、右手の割と細身な銀色のナイフを強く握り締める。


「この亞聖が解決してあげましょうか?キミがもっとも望むであろう解決方法で、ね」
亞聖はその少し細い目を細めて微笑む。赤い瞳が鈍く光り、それはどこからどうみても信頼できる笑みじゃなくて。でもオレには手段がなくて。亞聖にすがるしか、なくて。
「正直、お前みたいな奴は信用できないけど……。でも、それでも、オレは知りたい。美緒を殺した犯人、を」
「キミのお望みの通りに私は、しましょう」



前方から黒い影が現れた。奴の周りにだけ雪は近寄れないかのように、姿がはっきり見える。黒い帽子をかぶり、黒い眼帯を右目につけ、黒いコートをひらめかせ、至上最悪の精神快楽殺人者が、オレの元へと、きやがった。奴は雪よりも白い、白すぎる長い髪を従えて、癇に障る笑みを浮かべながらオレのほうへと悠然と歩いてくる。
ぎりりとオレは歯が鳴った。その姿を見るだけで、叫びだしてこのナイフで刺し殺したい衝動に駆られる。それほど奴が心底憎い。体が震えだす。憎すぎてどうにかなりそうだ。
そうだ、オレはこんな奴を、こんな奴を。


「嘘だろ……亞聖……なぁ!!嘘だって言えよ!!」
「いつだって私がキミに嘘をついたことがありますか?私は言ったでしょう?キミが最も望む解決方法で、とね。これはキミが望んだことなのですよ」
「オレは、こんなこと望んでない!なぁ亞聖、嘘だろ?なぁ………う、そだ……なぁ、亞聖!?」

「なかなか面白かったですよ、キミ」



忘れろ。
忘れろと何回自分に念じただろうか。
そのたびにあの日の光景が蘇る。あの日の真実。
ああ、美緒、オレは。
オレは、君を殺した奴の隣りで、しかもよりにもよって信頼しきって、立っていた、なんて。
でも今日で。今日で、それも最後。奴の息の根をとめて、今度こそ、オレは。
奴がオレの目の前で立ち止まった。
その右眼の下の「4」と書かれた黒いタトゥー。
忘れもしない、奴の証。
オレはすぐにでも刺したい衝動に駆られながらも、奴を睨み付けながらあることを尋ねた。オレはそれの答えが分からない限り、こいつを殺せない。
いや、殺したくてもこいつは死なない。


「ああ、キミは記念すべき444番目のターゲットだったようですね。ちょうどいい。キミに、いや全世界の人々にヒントを差し上げましょう」
「私がどうやって消滅するのか、とうことへのヒント、です」
「『幸福な加害者(ハッピーフール)』」
「これがヒントです」
「本当にキミたちは不思議ですね。答えはキミの前にまさに明白なのに、キミはどうしてそれをみないんです?まさに『幸福な加害者』と呼ぶに相応しい」



「『幸福な加害者』てのはなんなんだ!?教えろよ!!亞聖!!!」
興奮が抑えきれず、オレは亞聖の胸倉ににつかみかかる。亞聖はわざとらしく眉をひそめた。
「『幸福な加害者』?なんのことでしょうか」
「ふざけるな!!お前が言ったんだろ!!!お前を消滅させるヒントだって!!!!」
その瞬間、亞聖の瞳が凶悪にきらめいた。オレは思わずつかんでいた手を離した。

「やっと見つけた。お前、444番目のターゲットだな」

いきなり口調も変わり、声もあいつよりは低いものになった。そしてどこかでぼきっと大きな音がしたかと思うと、あいつの白い髪がみるみる黒く染まり、するすると短くなり始め肩ほどまでになる。次に赤かった瞳も黒く染まり、あいつの細い瞳が大きくなっていく。
「!?」
どんどん亞聖と違うものに変形していく。オレはその異様な光景に後ずさる。しかしそいつはオレの後退を許さず、オレが後ろに下がった分、つめてきた。
いつの間にか、左目の下の「4」という数字も消えている。
「さぁ、444番、その話を詳しく聞かせろよ」
そしつは右眼の黒の眼帯を無造作に投げ捨てる。
その瞳の下には「7」という数字のタトゥー。
「あ」
後ろに下がりすぎて、家の壁に背中がぶつかった。亞聖から変形した謎の男は、すぐそばまで近づいてくる。なにがなんだか分からなくなって、焦ったオレは声を上げた。
「あ、あんた誰だよ?」
男は瞳だけ笑っていない笑顔で、答える。
「俺は零夜。そうだな……、立場としてはお前と同じだ。いわゆる復讐者というやつさ。だから……」
零夜と名乗った男はそこで二歩後ろに下がり、そして右手をオレに差し出してきた。

「協力しようぜ、『幸福な加害者』」


こうして『幸福な加害者』と『不幸な擬態者』の復讐の物語は幕を上げた。
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No. 81 (Thu)
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Date 2006 ・ 01 ・ 12

『五分だけ待ちましょう』memo.ver

「五分だけ待ちましょう」
目の前のどうみても俺より年下の高校生ぐらいの黒いロングコートを着た少年は傲慢な態度でそう告げた。割と整った顔についている短髪は典型的な日本人の色、ブラック。なのに両の瞳は金色と銀色ときた。
「は?」
俺はわびしい一人暮らし大学生の、悲しい一人昼飯をコンビニで買ってきて、自分の家のドアを開けたとたんのこの異常事態に思考フリーズ。いやいやフリーズどころかぐるぐる回りすぎ。どうやってこの部屋はいたんだ、お前みたいな知り合いしらねぇし、何言ってんだかわかんねぇし、誰だよお前、そんでその手に持ってるやつなんなのよ、なんか黒いし、こっち向けんなよ、危ないだろ、ってをいそれはぁああああ!!!
「ひっ!」
俺は回り右をして逃げを打つ。
だって、野郎の右手に掲げられているもの、それは黒い例のアレ、この擬似平和の日本では持ってちゃいけないものだろー!
「逃げたら、即撃ちますよ」
俺はその一言で氷ついたように動けなくなる。
「まず、そのドア閉めてくれます?」
のろのろと俺は手を動かす。ドアを、唯一の脱出口を、自らの手で閉めゆく……ああ、空は晴天、俺の心と体はブリザード。冷や汗が止まらない。

がちゃん。

肩を強い力で捕まれ、俺はゆっりと少年のほうへと振り向かされる。ぐりっと、俺の額に銃が押し付けられた。少年はこの世のものとは思えない笑みを浮かべている。なんとも美しいが、それゆえに怖い。モナリザのえがおみたいなうそ臭さでめちゃ怖い。
「さぁ、仕切り直しです。五分だけあげますので、僕の質問に答えてください」
こくこくとかすかにうなづく。逆らったら、ヤられる。
少年は怖い笑顔のままこう言い放った。



「僕は誰ですか?」



俺が聞きてぇよ。



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