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No. 26 (Wed)
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Date 2005 ・ 08 ・ 31

010.歪

『訪問者』

白い廊下。
どこまでもどこまでも続くようで、ふと気付いたら終わっているような不思議な廊下。
人が横にゆうに三人は並べるその廊下は、どこもかしこも白いくせに、照明が弱いせいで清潔感というよりはどことなく薄汚れた陰気な印象を受ける。
そんな廊下にいつのまにいたのか、唐突に、いや最初からそこを歩いていたのか、一人の青年が廊下を歩いている。その足取りはもう少しでスキップをしそうに軽く、その顔は今にも口笛を吹き出しそうに明るい。しかし彼の服装はそんな雰囲気とは逆のものを醸し出している。
なぜなら、彼はどこもかしこも真っ黒だったからだ。
彼の瞳も髪も燕尾服も真っ黒の上に、特注の少してっぺんが丸いシルクハットの帽子も真っ黒。
彼は軽やかに進んでいく。白い白い回廊を歩く。
すると、右側の壁に何かがかかっているのが見えた。それはとてつもなく、横幅がある。しかし厚みはない。どうやら一枚の大きな絵のようだった。
青年はその絵の前でとまる。
その絵は標準的な身長の青年がクビをまげて、見上げるほどに大きい。彼はそれを楽しそうに、なめるように見つめた。
絵は紅いレンガを積み上げて造り上げられた壁を持つ家々が整然と並ぶ、少し窮屈さを感じながらも、どこか懐かしさをかもし出す街が描かれていた。またその赤の洪水の中央には白い長い大きな塔が描かれている。
ただ、それだけの絵だ。
他に生物の姿などは見当たらない。ただただ街の風景が描かれている。
「まったく、アキラの奴にも困ったもんだね」
青年がわざとらしくため息を付く。すると彼の足元から少し高い声がかけられた。
「お前のせいだろ?」
いつの間にいたのか、彼の足元には黒猫が一匹。おまけにさっきの言葉はこの猫から発せられたようだ。
「しょうがないだろ。それがアキラとの約束だからね。あいつも矛盾しすぎだよ、まったく。……でもまぁ、僕の目はごまかせないけどね」
彼の黒い瞳が鈍く光る。そして彼は絵にゆっくり両手を当てた。すると、彼が手をあてた場所、ちょうど白い塔の場所が、ぐにゃぐにゃと歪みだした。そのままするすると彼の手は絵の中に入り込んでいく。
「せっかく高い金払って落札してきてやったんだから、少しは楽しませてくれよ。お前はいっつもいっつもおいしいとこだけ持ってきやがってよ。俺がどんだけ苦労したか、お前にどうすれば伝わるんだろーな!」
黒猫はその光景に驚くこともなく、鼻を鳴らしながらむしろ彼に向かって悪態をついた。
「そういうなよ、ナイトメア。僕の唯一の相棒だろう?これでもずいぶん頼りにしているんだよ?」
すでに絵の中に半身をのめりこませながら、それでも笑いながら彼、フールは言った。
「じゃあ、行ってくるとするよ。まったく、アキラの初期作品は面倒くさいのが多いんだよね。まぁ、正直じゃないとこ、それが楽しいんだけどね」
左手を横に振ったかと思うと、彼は完全に絵の中に入り込んでしまった。絵は歪みも残らず、完全に彼が手を入れる前と同じ状況である。
後に残るは黒猫のため息。

「その性格だから、後々面倒くさいことになるんだろうが……」
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No. 25 (Tue)
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Date 2005 ・ 08 ・ 30

雨月物語

『雨月物語』

「一年後の今日はきっと雨月のような蒼海な空さ」
彼はプラスチックのような光沢をした、黒い大きな瞳を僕に向けて、言った。
この薄暗い場所の中にいてもその瞳は鈍く光り、僕を惹き付けてやまない。
もう逃げられない。
彼のこの空間から。

「僕は君のすべてを覚えている」

彼は僕から瞳を逸らし、この閉ざされた空間の中に唯一ある、大きな縦長の空を見上げた。それは狭く、深いゆえにあらゆるものを拒絶している。
こんなにも綺麗な蒼海の色をしているというのに。
そう、まるで海を底から見上げているような……。
蒼海の空。
息が苦しくなる。
僕はあの狭い空へ向かっていくんだ。
そう、向かっていく。
彼の言葉が及ばないところまで。
そして僕は縦長の空へと逃げ込まなければならない。

逃げ込む?

彼の声が静かにあたりに染み入っていく。

「今年も僕は僕と出会ったからさ」

あの空間に取り残されているのは、

誰?

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No. 24 (Sun)
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Date 2005 ・ 08 ・ 28

「      」

20050814_1712_0000.jpg


僕はこの夢で最後のウソをつく。それはまさに夢より鮮やかに。

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No. 23 (Sat)
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Date 2005 ・ 08 ・ 27

理想郷計画。

『理想郷計画。』

「ああ、本当に大きな木だ」
すっかり白髪になって、老け込んでしまった男が柔和な笑顔を浮かべて呟いた。
「今回の『神様』は良い人のようですねぇ」
青々とした葉をつけた大木のごつごつとした幹を擦りながら、男の長年の連れである老婦人が似たような笑顔で答えた。
「しかし、『神様』のほうはもう飽きられたご様子だ。ほら、あそこ……」
男が後ろを振り向き、この大木がある丘を取り巻いて広がっている街を見下ろした。そして皺だらけの手で街の南部辺りを指差す。
「まだ五ヶ月というのに、灰色の色彩しか出なくなっている。……本当に残念なことだ」



「二十一番、おまえもうクビだ。明日から来なくていいぞ」
「はぁ。あークビか……うーん、やっぱりね」
短い事務的な言葉だけを言って去っていった上官の背中を呆然と見送りながら、青年はほとんど機械的に手を動かす。作業と言っても、白い四角い形をした年代ものの『理想郷開発百八号くん』の上に手を置いているだけだが。そうすると、目の前の巨大な液晶モニターに自分の思い描いた世界が映し出されるという仕組みになっているのだ。
最初は純粋に楽しんでいた彼だったが、五ヶ月たった今、彼はその作業に飽きてきていた。すると何を考えても全部が灰色の色彩で出てきてしまい、理想郷とは程遠い世界となっていってしまったのである。
まるで彼の夢がすべて吸い取られ、枯れ果てたかのように。
「明日から理想郷行き、か……」



「どうやら今回の『神様』はもう廃棄のようだな。これで二十一人目だったかな」
老人が苦笑するように、すべてを灰色に侵食された街を老婦人と見下ろしながら言った。
「あの……」
しゃがれた声が彼らの背後から弱々しくかけられる。
そこには一人の置いた男が立っていた。
老人は老婦人と柔和な笑みを浮かべる。

「ああ、始めまして。二十一番さん。私は一番というものです。以後よろしくお願いしますね」

スレッド:短編小説 // ジャンル:小説・文学

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No. 22 (Thu)
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Date 2005 ・ 08 ・ 25

009.かけら

『ルール』

「では今から『黒羽鳥の祭り』の参加ルールを読み上げたいと思います」
紅い街の中央にある広場のちょうど真ん中に設置された台の上で、あいも変わらず顔色の悪い黒髪・黒目の街人の一人が声を張り上げた。
台の周りに集まり、ざわめきあっていた大勢の街人が彼を見上げ、しんと静まり返る。それに気をよくしたのか、台の上の男はひとつ空せきをして、先ほどよりも大きな声を出して紙を読み上げ始める。
「これより明日から三日間、『黒羽鳥の祭り』が開催されるが、以下のルールをよぉく守って皆様健闘されたいと思います。ではまず、配られた紙をご覧ください」
アサギはその指示に従い、先ほどくじによって引かされた、薄汚れて四角にたたまれた一枚の紙を広げた。
「?」
紙を広げると、それはちょうど手のひらに収まるくらいの正方形の形をしていた。しかし、不思議なのはそこには何も書かれていないということだ。まったく真っ白なのである。辺りを見渡してみると、他のものも同様らしく、皆首をかしげている。
「それは黒羽鳥を呼び出す儀式に必要な地図です。……ああ、皆さんの言いたいことはよく分かります。そこにはまだ何も書かれていないということでしょう?それは公平をきすためなのです。明日の朝、祭りの始まりの合図とともにそこに地図が浮かび上がる仕組みとなっているのです」
アサギの周りから感嘆の声が漏れる。かくいうアサギも興奮を隠し切れない。紙をすかしてみたり、裏返してみたり観察に夢中になっている。
「明日の朝になると、皆さんがお持ちの紙が一枚の地図に早代わりすることでしょう。そしてそれは黒羽鳥へと続く地図となります」
辺りが、おおっという歓声でどよめいた。アサギもようやく紙の物色を終え、男へと向き直る。男は先ほどの自慢げな様子から、なにやら真剣な様子へと一変している。アサギも知らず気を引き締める。
「しかし、この地図一枚では黒羽鳥への道は開けません。その地図が示す先にはまた地図があるはずです。皆様はこのような地図を繰り返してお探しになり、合計……九枚の地図を手に入れなければなりません。そして、最後の地図がそろったときに初めて、黒羽鳥への道が開けるのです」
「きゅ、九枚も……」
アサギの口から情けない声が漏れた。
「三日しかないから、一日三枚は見つけなくちゃいけないってことか……」
「九枚の地図のかけら……それを集めたとき何が起こるかは私らにも分かっておりません。それを知ることができるのは、勝者だけ。……黒羽鳥に願いを叶えてもらったものだけです」
アサギの瞳が男の言葉に反応をして輝きを増す。彼のどがごくりと鳴った。
「しかしくれぐれも注意してもらいたいことがあります!その地図はいわばこの世界の創世主の黒羽鳥の一部、同時に作られた私たちの一部でもあるわけです。……この意味はお分かりですね?かけら、そう、もっとも尊い魂のかけらであるわけなのです。それゆえ、ゆめゆめぞんざいに扱わないことを願います。……それでは皆さん!明日の朝をお楽しみに!皆さんのご健闘を願っています!」
男が片手を挙げたかと思うと、どこからか紅いバラの花びらが降ってきた。後から後から降ってくるそれは、アサギの視界を赤で染め上げていく。一色に染まることで、頭の芯がぼうっとしてくる。それは妖しい魅力を放ちながらも、まるで彼を祝福しているかのように思えた。
それに触発され、アサギはぎゅっと紙を抱きしめた。
誓いを新たにして。

「そう、僕は絶対に、君に会いに行く」

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No. 21 (Mon)
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Date 2005 ・ 08 ・ 22

008.魔性

『ある夜のお話』

「こんばんは」
「あら、こんばんは。あなた誰?こんなところまで何か用?どうやってきたの?私が誰だかわかる?あな、」
「ストップ!…意外とよく話すね、君」
「…ごめんなさい。人と話すのすごく久しぶりで…」
「それも仕方がないかな。こんな真っ暗な中に長い間一人で閉じ込められちゃったらねぇ。どれくらい閉じ込められてるの?」
「さあ?そんなこともう忘れちゃったわ。そんなのくだらないことだもの」
「それもそうか。君はこの世界の構造を知っている例外だものね。さすがは『おうさま』。王様は何でも見通さなきゃいけないからねぇ。さすがは大量生産品。自分で自分の首を絞めてるわけだ!」
「……そんなくだらない話しかしないのなら、帰ってくれない?」
「これは失礼!君がこのことで気分を害すなんて意外だよ!」
「……自分の子供たちのことを悪く言われたら、誰だって怒るわ」
「あっは!子供たちだって?ただの生贄にむかって、なんて滑稽なんだ、君は!僕はますます君が気に入ったよ」
「あなたに気に入られても嬉しくない。で、結局あなた誰?」
「失礼、そういえば名乗り忘れていたよ。僕の名前はフール」
「フール?……嫌な意味ね」
「確かにね。僕はこれでも結構気に入ってるんだけど」
「それにそんな名前の知り合いは私にはいないわ。あなた何者?」
「だから、フールっていったじゃないか」
「そういうことじゃなくて。ここに入るのだって、かなり不可能なことなのに……」
「そんなことは問題にもならないさ。だって僕の別の名前はクロハネドリだからね」
「!」
「そう、僕は君のもとにきた。この意味わかるよね?この世界の構造を知っている君なら」
「……」
「さて、僕は君に決めたよ」
「……」
「本当に最近の仕事は面倒だ。みな、構造に気づいているんだもの。やっぱり初期は駄目だねぇ。さ、早く望みをいってくれないかな?」
「……」
「さぁさぁ、早く」
「……私の望みはあなたには叶えられない」
「どうしてだい?」
「だって、私の望みは……」
「ん?ああ!もしかしなくてもそういうことか!ああ、まったくもって面倒な仕事だな。僕の報酬がそのまま望みだなんて!どうしてそんなこと考えるんだい」
「私にとってここは憎むべきところであって、同時に私自身だからかしら。でもだからこそ私はここを自分の力で脱出したいと願っているの。だから、私にはあなたは必要ない」
「そんなこと言われてもね。僕は次のターゲットにここに決めたんだ。もうこれは変えられないんだよ」
「……」
「ふぅむ。どうしたもんか」
「……」
「……そうだ!ゲームをしないかい?」
「ゲーム?」
「そう。とても愚かで崇高なゲームさ。君が勝ったら君が望んだようにしてあげるし。君が負けたら、それと逆のことを僕はする。そうすれば僕も制約関係なく動けるし、どちらに転んでもおいしいからね」
「……それって私が勝つまであなたここにいなくちゃいけないってことだけど、いいの?」
「まったくもって構わない。僕はおもしろければそれでいいんだ。それよりも君は自分のことを心配したほうがいいんじゃにのかい?」
「……そうね。私は誰よりもここを憎んで愛してる。そのことをあの子たちに伝えられると思うと、本当に、」
「本当に?」
「ぞくぞくするわ」
「……君は彼女の中でも一番性格が悪いねぇ」
「だって、私は初期だもの」
「それもそうか」
「ああ、本当に楽しみ。今まで私を虐げ敬ってきたあの子たちと触れ合えるなんて。本当に楽しみ」
「契約は成立だね」
「ええ。もちろんよ。私が断るはずがない」

「ああ、本当に、楽しみ」

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No. 20 (Sun)
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Date 2005 ・ 08 ・ 21

007.石

『バラバラ・後編』

結局、モエギは家でもいらいらしていた。
理由は明白。
自分の左手の人差し指から流れ出る血のせいだ。先程、夕食を食べ損ねたので自炊をしようと包丁を握ったらこのザマだ。
なれないことはするものじゃない。
とりあえず止血をして包帯を巻いておいたが、家の中に血のにおいが充満しているようで息苦しい。
「ちっ」
モエギは今日何度目かわからない舌打ちをした。そのまなこはぎらぎらと火のように血ばしり、今にも黒目の部分に点火しそうだ。
モエギは食卓の横の備え付けの鏡をふと見た。そこに映るは黒目・黒髪の貧相な顔をした男。街中のどこにでもあふれている顔。これがすべてという顔。その目はぎらぎらと赤く染まっている。

あかく。

「あ、うわああああああああああああ」

鏡が割れる耳障りな音があたりに響き渡る。モエギは肩で息をした。今度は右手が血塗れになる。ぽたりぽたりと血の雫が床に落ちた。モエギはその手を無表情に見つめていたかと思うと、ゆっくりと顔をあげた。ひび割れた鏡に嫌悪ではなく嘲笑の笑みが映る。
その唇からかすかなことばがもれた。
「そうだ、あいつらは代えはいくらでもいるクズどもだ。石ころのようにあまりに無数にあるから、価値もねぇ。だったら俺がそれを1にしたって誰も文句はいえねぇよな。そうだ!オリジナルとして俺があればいいんだ!あいつらの汚れた血なんぞいらない!俺だけが生き残ればいい!ようやくわかった!なぜ赤が嫌いだったのかが。なぜ、赤に反応するかなんてとても簡単なことだったんだ!
それは、赤は、俺のシンボルだったんだ!
それを卑しいものたちに使われるのが我慢ならなかったんだ!あいつらはただの石で俺は黄金に輝く石だったわけだ!俺は選ばれたんだ。この多すぎる模造品たちのオリジナルはこの俺なんだ!!あいつらの皮をひんむいて汚れた血どもを一層してやる!」
そしてモエギは何もかもおかしいとばかりに、高い笑い声を発するのだった。
その笑い声が唐突にぴたりと止まり、モエギは一瞬無表情になる。
そしてぽつりと呟く。
「そうと決まったらさっそく準備しねぇとな」
ひび割れた鏡に映ったモエギは再びさっきと同じようににやりと笑った。

しかし、その瞳はもはや漆黒ではなく深紅に染まっているのだった。

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No. 19 (Thu)
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Date 2005 ・ 08 ・ 18

006.無数

『バラバラ・前編』

「ちっ、いらいらする…」
モエギは自分の頭に降り積もった赤い花びらを無造作に払いながら、毒づいた。その上赤いバラの花びらが無残に地面に落ちたところで、上から足で踏み付けてやる。
モエギは赤という色が嫌いだった。
なぜだかは知らない。
生まれてきてから今までずっとそうだった。
赤いバラの花、赤い苺、赤い風船…。
モエギを苦しめる赤色は本当に無数にある。
その無数にあるありとあらゆる赤いものにまるで獰猛な牛のように過剰に反応してしまい、モエギはいつもいらいらしてしまうのだ。
その中でも特に敏感に反応してしまうものがある。

それは、血だ。

何かの生きものが少しでも血を流す光景を見てしまうと、まず吐いてしまう。次に吐いたことを理不尽に感じ、最高潮にいらいらする。そして最後に手当たり次第に回りのものにあたりたくなるのだ。
まぁ実際、あたる。
その繰り返し。
そのようなモエギをいつしか街人はモエギがいくら「病気だ」と言っても認めず「頭がおかしい乱暴もの」として疎外していた。先程も夕食をとろうとしてレストランに入ろうとしたら、入店を断られてしまったほどだ。
「ったく、この花うぜぇんだよ」
モエギは再度、頭の上に落ちてくる花びらを払い落とす。しかしその行為にあまり意味はなかった。なぜなら明日からの『黒羽鳥の祭り』の前夜祭として、街の家々から絶えず投げ散らかされているからである。黒羽鳥は特に赤い色を好むとされ、鳥を呼び込みやすくするために、祭りの前日にはこれを撒く決まりになっているのだ。
ただでさえ「あかい」レンガでできた街が「あかく」なる。
「ちっ」
モエギは払うのを諦め、さっさと家に戻ることとした。先日、この病気が原因で妻が家を出て行ったせいで、誰も待つ人のいないさびしい家だが、ここよりは数倍も数十倍もましな場所だ。
モエギはその時のことを思い出しながら、また舌打ちをした。
ひどくいらいらする。
この赤い街、おかしな祭り、皆一様に同じ顔をした黒髪・黒目の住人、自分自身、何もかもすべて。
モエギはぎらぎらと辺りの住人をにらみつけた。そしてぶつぶつとつぶやきだす。

「赤、赤、赤、こいつらの中にはあの忌まわしい赤い血が無数に流れている。ああ、こいつら全部皮をひん剥いてその赤を残らず取り除いてやりたい。いらいらする。いらいらする。何もかもこの赤のせいだ」

ひときわ強い風が吹き、赤い花びらがよりいっそう空に舞った。

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No. 18 (Tue)
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Date 2005 ・ 08 ・ 16

八月十五日

わたしたちの間では今、戦争ごっこが流行っています。しかし私たちには帰ることができる家がありますが、兵隊さんたちは塹壕の中に残るしかなく、さぞさぞお疲れのことでしょう。

上記の話は毒屋の携帯に残っていたメモです。今日、何気なく携帯いじってたらでてきました。昨日、見つけていればよかったんですが……。しかしこの文、毒屋が書いたものじゃなかったと思うんですよ。どなたかのいたく感銘してメモったような……?だから、題名もつけてないのですが。誰か知りませんかね。この元の文。
毒屋はこの文を読んでかなり背筋が震えたような気がします。これは子供の一人称なんですが、なんですかねこの淡々とした雰囲気は。これが日常という恐ろしさ。
まぁ、でも今日本が戦争したら確実に負けますよね……。
その時は最初に死にたいものです。


きつきから「MOEバトン」なるものが回ってきました。「続きを読む」のところで回答しております。しかし、かなり変態度が高いので要注意。ミャハ★死。

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No. 17 (Mon)
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Date 2005 ・ 08 ・ 15

005.迷

『扉の向こう側・後編』

そういえば、君に僕の住むこの街の構造を教えたことはあっただろうか。
たぶん、ないと思う。僕はいつも君の世界のことを聞いてばかりだからね。
君が呆れてなければいいけれど。
僕の街はひとことで言えば、『紅いレンガの迷路』ってところかな。家はみんな紅いレンガでできていて、中央にある、これだけは白い高い塔を取り囲んで全体的に円形に広がっているんだ。そして街と外との境目には高い高い紅いレンガの壁が立ちはだかっている。家々は隣りの家と屋根が重なりそうになるくらいひしめき合っていて、道は塔を中心とした十字の大通り以外は人がやっと通れるくらいでどれもせまい。おまけに家がひしめきあいすぎて、遠くの景色が見えないから自分が今どの方角に歩いているか分からなくって、まるで迷路みたいなんだよ。だから、通称『紅いレンガの迷路』ってわけ。
そうそう街の中心といってもいい白い塔のことなんだけれど、これはただの窓のない高い塔なんだけど、街人はなぜかみな『おうさまのお城』と呼ぶんだ。そんななんにもなさそうな塔なんて、考えてみたら光がささなくて真っ暗ってことじゃあないのかな。そんなとこ誰も住めなさそうなものなのにね。街の人たちはまったく噂好きで、あそこにはそれはもう『美しい美女がいる』とか『いやいや美しい男』だとか『いやいやいや美しいユニコーン』だとか言っている。
君はどんなものがそこにいたらいいと思う?

僕は、

僕は、そこに君がいたらいいなと思う。

いや正確には君の世界に通じる扉があればいいと思う。僕は君にどうしても会いたい。ここから逃げ出して、一人として生きてみたい。
いやいやそれは嘘だ。……正直、僕は自分が生きたいのかどうか分からない。でも自分が消えたいのかどうかも分からない。

ただ、君に会いたい。

それだけを強く願ってるんだ。

だから僕は今年、『黒羽鳥の祭り』に参加しようと思う。今まで何か不気味な感じがしてあの祭りは必要だけど深くは関わらないようにしていた。でも、今年僕はそれをやめる。黒羽鳥を呼び出して、君への扉を開くことにするよ。だから待っていてくれないだろうか。
絶対に、絶対に会いに行くから。
約束する。
……しばらく手紙を書くのはやめにするよ。次にはきっと君の前に現れてみせる。
それじゃあ、また。

                                          敬具 アサギ

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No. 16 (Sun)
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Date 2005 ・ 08 ・ 14

夏逝ってきました。

夏の祭典(二日目)逝ってきました。←わざわざでかい

もうなにかと、自分はあほかと。うっ、うっ、分かってる。分かってるけどやめられない。核。開始三十分後の友達へのメール↓

『開始三十分にして金ぎれでしゅうりょー。死』

誇張なし!爆。
だって、だって本が多すぎだよmyジャンル!嬉しい、愛が重いのが嬉しいけど油断してたんだよぉおおお(´д`)オカネオカネオカネオカネ
しっかし金ないのに友人Fが大手に並んでいる間暇なので、ぶらぶらするはめに。目移り目移り。死。しょうがないので思い切って場所変えしたら、思わぬめっけものをしちゃいました!
創作CDなるものを回ってみたのです。そしたら、もう私ごのみのサークルがありましてね。そのCDの名は『古代幻想シリーズ』/MIDI KIDS 名前だけでハアハア……三十パーセントくらい嘘(え、残りは?)。これが日本古代史をテーマにしてて、ものすご歴史感溢れてて最高なんですよ!毒屋は今回「東大寺」をテーマにしたCDを買ってみたんですが、これがイイ(・∀・)!透明感のあるシンセサイザーの音で表現される東大寺の空気!癒しなのかなんなのかわからんけど、確実に癒されましたわ~。おかげで電車代がなくなるところだったわ。くわばらくわばら。

そんなこんなで◎年ぶりの夏の祭典はすぎてゆくのであった……ああ、もう毒屋の夏は終わってしまったんだなぁ(え)

きつきのところから「コミックバトン」が回ってきました。あ、普通だわ。藁。「続きを読む」で回答しておりますので、興味がある方はドゾー。
後編は明日にでもアップしま……す?(ええ)
腐った女の思考あり。 // コメント(3) // トラックバック(0) // Top

No. 15 (Sat)
dayline

Date 2005 ・ 08 ・ 13

004.imitation

『扉の向こう側・前編』

拝啓、朽葉様

『本物はどぉれ?どぉれ?どぉれ?あなたはだぁれ?だぁれ?だぁれ?わたしはどっち?どっち?どっち?』
今、子供が僕の目の前を通り過ぎたよ。昔ながらこの町に伝わる歌をうたいながらね。ああ、君はこんなへんな歌、全然内容も薄くて意味ももたなくって嫌いっていうかもしれないけど、仕方ないんだ。
……だって、君も知ってるよね?僕達の街はそういうものなんだからね。黒髪、黒目で皆、同じようにまるで病人のような顔色。街中どこをむいてもそんなのばっかりさ。男も女も関係ない。ただただ同じ顔。僕は生まれてこのかた僕と同じ顔しか見たことがないよ。君は違う世界の人なんだろ?だったら、君は僕と同じ顔じゃあないんだよね。…まさか君の世界も僕の世界と同じようなものじゃあないよね?いやいや、それでもいい。どうにかして一度でいいから君に会いたいよ。そして、この街を捨てたい。……いや、逃げたい。
僕は恐いんだ。最近、街はなんだか空気がぴりぴりしている。同じだからこそ共有する感覚さ。これは何かが起きる前兆だと思うんだ。明日から三日間、1年に一度の『黒羽鳥の祭り』が始まる。その時に何かが起こる気がして仕方がないんだ。そういえば、君の世界では『黒羽鳥の祭り』をやらないそうだね。それだけは僕は理解できないね。じゃあ君たち、君の世界の人たちは誰に浄化をしてもらうんだい?浄化をしないときついだろう?おりが溜まりすぎてしまって。まったく君たちはどうやって生きているんだ……。本当に謎だ。ぜひとも今度の手紙で教えてほしい事柄です。
ああ、それにしても本当に君に会いたい。オリジナルで一人しかいないかけがえのない君。僕達のような欠陥のある模造品ではなく、完璧な製造品。……なんて羨ましいんだろう。君にあって、確かめたい。ぜひとも確かめたい。

僕は、まったく、いらないということを。

僕たちは生きてるだけで否定されているっていうのに、どうしてそれを認められないんだろうね。

本当、それを認められたらどんなに楽だろうか……。

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No. 14 (Fri)
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Date 2005 ・ 08 ・ 12

某ひきこもりサークルの合宿in河口湖

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四日目。某ホラーゲーム『サイレン』やりすぎて徹夜。朝日が眩しい。しかし写真は樹海のもの。爆。

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No. 13 (Thu)
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Date 2005 ・ 08 ・ 11

某ひきこもりサークルの合宿in河口湖

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三日目。樹海。引き止める看板。

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No. 12 (Wed)
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Date 2005 ・ 08 ・ 10

某ひきこもりサークルの合宿in河口湖

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二日目。ダヤンの美術館。写真は三日のもの。藁。

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No. 11 (Tue)
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Date 2005 ・ 08 ・ 09

某ひきこもりサークルの合宿in河口湖

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一日目。到着。とりあえず河口湖。

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No. 10 (Mon)
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Date 2005 ・ 08 ・ 08

003.楽園

『本日の大物』

行商人「やぁ、やぁ皆さん、お聞きくださいな。世にも不思議。終わらない街の話をしようじゃあないですか」
子供 「終わらない街?それ、お話の題名ってこと?」
行商人「ちがうちがう、それは百八十度くらい違うよ、坊っちゃん。いいかい、よく聞きな。これは『終わらない街』の話なんだよ」
子供 「…同じじゃん」
行商人「…その街は楽園と呼ばれていました」
子供 「あ、ごまかした」
行商人「そこの坊ちゃぁん、すこぉし黙ってもらえるかなぁ?」
子供 「こわっ!おじさん、笑顔ですごむなよ…」
行商人「さてさてその街はとにかく楽園と呼ばれていたんですよ、皆さん」
子供 「…ふぅん、どうして?」
行商人「理由は三つ。一つはここには終わりもなく、始まりがない。つまり、街人は不老不死だったってことですよ」
子供 「うわ、いきなりムリのある話だね、おじさん」
行商人「…二つ目。この街の人は皆黒髪・黒目で、ただ一種類の種族のみのコロニーだったこと。つまり、その外見と同じく、中身も同じだから街の中で争いはなく平和だったといことですな」
子供 「へぇ、それはすごいね。でも同じ顔がいっぱいって気持ち悪くないのかなぁ?」
行商人「……三つ目。この街の「おうさま」の存在だ。この「おうさま」のおかげで街は永遠に終わらないようになっていたらしいんですよ。そう、「おうさま」はこの中央、白い塔に住んでいて、それはもう『美しい美女がいる』とか『いやいや美しい男』だとか『いやいやいや美しいユニコーン』だとか噂もものすごくなるほど、まさに神様の領域だ。この神様のおかげで街人たちは精神を病む、つまりこころの安寧も得られたわけということですな」
子供 「ふぅん。ストレス社会の現代にはもってこいな街だね。夢のまた夢だ」
行商人「と、に、か、く!これには金では買えないアキラの理想の楽園を、アキラの永遠に得られない夢を、描いたもんなんです」
子供 「つまり、一人の男の魂がここにはこもってるわけだ。……金では買えない、ね……」
行商人「うるせぇ!お前のその口ひねりあげてやろうか?!……ごほん。さて、ではこの日本が生み出した早熟奇才画家、火神アキラの遺作である『終わらない街』。まずは一千万からはじめたいと思います! 皆様、札の準備をお願いいたします!」

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No. 9 (Sun)
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Date 2005 ・ 08 ・ 07

002.月

『Fallen』

ツキはすべてをみていた。
その街の始まりも終わりも。いや、そもそもこの街に始まりなどない。ただツキはその終わらない輪廻をみているだけだ。
街の崩壊は決まって夜に起きる。しかも絶対に満月の日に。月がもつという魔力が反映しているのだろうか。街はきっとその日、狂気にとりつかれるのだ。
それも的を得た意見なのかもしれない。なぜなら、街の崩壊のハジマリは決まって一人の街人が狂気に取りつかれるところから始まるからだ。そしてどういう原因なのかは不明だが、その狂気は街人全員に伝染していく…。
…いややはりこれも別に不思議でもなんでもないのかもしれない。なぜなら、街人は皆同じ姿をしている。黒髪、黒目、不自然なほどに不健康そうな青白い顔。男女の性別はあれど、その外見にまったく差などない。
皆、一様に同じなのだ。まるで同じように大量生産されて作られた人形が、自分達だけの街を作り、さまよっているようだった。
そう、そのように感じるくらい皆、一様。
ツキをのぞいて。
ツキは水色の長い髪、瞳を持っていた。だからそれ故に彼らはツキを同じモノだとは認めなかった。彼らは和を乱す異端のモノを厄介払いしたがったのだった。
そこで、作り上げられたのがこの白い白い塔。
窓もなく、部屋もひとつしかなく、その部屋にはベットしかないという簡素なもの。住み人もツキしかいない、淋しい牢獄。
閉じ込められたのはいつだったか、もう覚えてない。まぁ、この世界で時間の概念など意味はないのだが。
塔の中は窓がないため、当然真っ暗だった。
なのでツキは耳を住ませる。外では色々な音があふれていた。あの死んだような街人でも生きているのだ。そのことが妙に気持ちが悪い気がする。生というものの醜い執着を感じるのだ。
ツキは生きているのに死ななくてはいけないのに。
ツキは陽が射す明るい世界にいられず、夜闇に紛れなければならない。その名前の通り。
ああ、今夜は満月。
まがまがしくも美しく、震えるほど心踊り、そして絶望するほど一人ぼっちの時間。
外では街人が狂っていく音がたえまなく聞こえる。
さぁさぁ、そのまま皆狂ってしまえ。ツキの魔力にあてられて、永遠に得られないものを焦がれるがいい。
その存在を恐れるあまり、時を経る度に、『ここには「おうさま」が住んでいる』という祭りあげにはしった奴らはなんて滑稽!自らが葬った下のものを上に祭り上げるなんて。本当になんて滑稽なんだろうか。

そこでツキは誰がみても、みほれるだろうほほ笑みを浮かべた。

さあさ、今夜もツキのために生贄を捧げくれるよう。
可愛い可愛い子供たちは自分たちで自分の首を絞めていく。

塔の外では濃密な闇が、月の光にさらされて、膨れ上がる直前であった。

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No. 8 (Fri)
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Date 2005 ・ 08 ・ 05

001.epilogue

『永遠に未完成の絵画たち』

その街は見事なほどに破壊されつくされていた。
元は紅いレンガを積み上げて造り上げられた壁を持つ家々が整然と並ぶ、少し窮屈さを感じながらも、どこか懐かしさをかもし出す街だったのだが。今はそれは完膚なきまでに破壊されている。原型をとどめる家はひとつもなく、ただただ粉々になった紅いレンガが初夏の風に煽られ舞い上がるのみだ。
街の中央に鎮座していた城も同様の有様だ。ただ、城があったところだけは白い粉が舞い上がっている。しかし元の形は「城」と呼べるものではなかった。それは「塔」といったほうが相応しい。窓もない、白い大きな塔だ。この街の中央にあったその塔は一人の「おうさま」が住んでいたのでただ単に城と呼ばれていた。「おうさま」の姿は誰も見たことがなく、それは美しい女神のような人だとか、いや男だとか、いやいや実は意表をついてとても美しい毛並みのユニコーンだとか、様々な憶測が街の人たちの間で交わされたものだった。
「ふむ。もうここには黒羽鳥はいないようだ」
その何もない街に唐突に若い少年のつぶやきがもらされた。黒髪・金目の少年はまるでそこに最初からいたかのように、街の残骸の上に立ち、城のあったほうを眺めている。しかしその格好もまた奇妙だ。髪にあわせたのか、全身真っ黒のまるで燕尾服のようなものを着ている。そして極め付けに頭の上にこれまた黒い大きなシルクハットよりも丸い形をした、どうやら特注の帽子をかぶっていた。
「ナイトメア、どうやら僕たちはまた出遅れたようだよ」
少年は猫の瞳のような細い金色の瞳をさほど残念そうでなくゆがめながら、足元の黒猫に話しかけた。ナイトメアと呼ばれた、こちらは本物の黒猫がいかにも面倒くさげに鼻を鳴らした。
「おめーが、前回遊びすぎたからだろ。ん? 何かまだいるぞ」
猫は鼻をひくひくと動かし、城だった場所に歩いていく。
「ここだ、フール。掘ってみろよ」
猫はちょうど城の中央を足でかく。それを聞いて少年は鼻の上にしわを作り、心底嫌そうな顔をした。「えー嫌だよ。服が汚れる」
「つべこべいわずにやらんかい!」
と、そこでひときわ大きな風が吹いた。辺りの砂塵が舞い上がり、地面がさらされた。猫のいた場所もさらされる。
「なんだ、残骸じゃないか」
少年は冷たい声で言う。風にさらされ、城のあった場所からでてきたのは一人の少女だった。水色の長い長い髪をもった端正な顔の少女。残念ながら目を閉じているので、その瞳の色は見えないが、きっと誰もを魅了してやまない美貌だったことは想像に難くない。しかし少しの難点を挙げるならば、少女の顔の部分部分から木の芽のようなものが生えていることだろうか。それは水々しい緑色をしており、蝋人形のような顔色をした少女から生気を奪い去っているように見えた。
「しかも黒羽鳥に食われてる。この絵はもうゲームオーバーだな」
やれやれと言った感じで肩をすくめる少年。猫ももう一度、おもしろくなさそうに鼻を鳴らした。
また風が吹いた。
風がやんだ街の跡地にはもう彼らの姿はなかった。はじめと同じように何事もなかったかのように、破壊された街が残るのみだ。
甲高い鳴き声が辺りに響き渡る。どこからやってきたのか、空には黒いからだをもった小さな鳥が飛び回っていた。四、五回ほど旋回しただろうか。その時、目を疑うような出来事が起こった。
自動的に紅い粉がレンガの形になり、それが積み重ねられ、家が元通りに作られる。そしてそれが数分繰り広げられたかと思うと、あっと言う間に街は元通りになってしまった。そして、その次に城の残骸にも同様のことが起きる。白色の粉はレンガの形になり、下から上へと積み重なっていく。少女もそれに伴い、何かの手に導かれるように上空へと高く高く浮いていく。そして塔の最上階ができたところで、少女は最上階の屋根へと貼り付けられた。
これまで生きている気配のしなかった少女が驚くべきことに瞳を開けた。澄み渡る空と同じ、空色の瞳。その瞳から透明な雫が落ちた。

「そう……。また負けたのね」

少女は悲しげに街を見下ろした。
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No. 7 (Thu)
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Date 2005 ・ 08 ・ 04

ネタネタねたー寝た!

ネタネタねたー寝た!
というわけでこんばんわ。もうバイトの日とかぐだぐだで日記のネタとか考えられなくなってる毒屋です。死。バイトのネタが書けたら最高なんですがね……。しかし今の世、何がきっかけで訴えられるかわかりませんからなぁ。うっかりしたことかけねぇよ。という系統のバイトなのです。爆。

そこで、百のお題系とか憧れていたんで、それをお借りしようかと思いますた。そうすれば、ネタも考えなくてすむし、何しろやり終えた後の達成感は計り知れないは……ず! やり終えれば。爆。まぁ、どこまで持つかお付き合いくだされ。

「創作家さんに100のお題」からお借りしました。その中の『創作家さんに100の主題』をやらせていただきます。
以下がその一覧です。

001. epilogue 002. 月 003. 楽園 004. imitation 005. 迷 006. 無数 007. 石 008. 魔性 009. かけら 010. 歪 011. 祝 012. 逃亡 013. death 014. 師 015. 柱 016. 寄り添う 017. 連鎖 018. 庭 019. 前夜 020. 術 021. 廃墟 022. sweet 023. 眠 024. 雪 025. 覚醒 026. 双子 027. 歌 028. 象徴 029. cool 030. 探 031. 記 032. 代理 033. 過ぎる 034. 暗号 035. 嘘 036. memory 037. 未完成 038. 埋 039. 弱冠 040. 歯車 041. 楽器 042. 紙 043. folklore 044. 鍵 045. 人形 046. 痕跡 047. 霧 048. 葬送 049. 不思議 050. fortune 051. しるべ 052. 壊 053. 孤影 054. 伝言 055. 誓 056. 出会い 057. another 058. かりそめ 059. 継承 060. 境 061. 恋人 062. 飛び立つ 063. 瑕疵 064. 棘 065. 血 066. 氷 067. 異邦 068. 名 069. magician 070. 錆 071. 残る 072. 地上 073. 絶対 074. cross 075. 久遠 076. 禁忌 077. 告白 078. 灰 079. 祈願 080. crown 081. 幽囚 082. 浄化 083. 閉 084. balance 085. 忘却 086. 相違 087. 空 088. 星霜 089. 条件 090. 鳥 091. 秘密 092. いつか 093. master 094. 果て 095. 城 096. 約束 097. 花 098. 片割れ 099. 生まれる 100. fantasy

素敵な主題ばかりですよね~。あとは毒屋の表現力と根性がどこまで持つかですな……(´д`;)
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No. 6 (Wed)
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Date 2005 ・ 08 ・ 03

あて先のない手紙

『あて先のない手紙』
今日もきた。
あて先のない手紙。
封筒の表にも裏にも何も書かれていない手紙は、これで夏休みに入って一週間連続できたことになる。私は思わず長い長いため息を吐いた。
最初にそれが届いたとき、郵便配達ミスかと思っていた。それで郵便局に行ってみたところ、「何言ってるんですか。そこにちゃんとあなたの家の住所が書かれているじゃないですか」と怪訝な顔をされ、追い返された。次の日、また真っ白な手紙は同じように送られてきた。何か理不尽なように思われ、一日目の手紙とあわせて読みもせずに破いて捨ててやった。三日目、またそれは届く。さすがに怖くなり、中身を確認してみる。そこには封筒同様、真っ白な便箋にパソコンの字でこう書かれていた。

「やっと君を見つけたのに。なぜ君は僕がわからないの?」

四日目、また手紙が届く。中身は三日目と同じ内容。五日目、それが届けられるところを見届けようと窓からポストを見張るが、誰もポストに近寄らない。郵便配達員ですら。同夕方、ポスト内を確認する。………同じように手紙があった。中身はやはり同じ。三日目、四日目とあわせて破り捨てる。六日目、また同じように届く。中身も、同じ。
そして今に至るというわけだ。一週間、誰かが私に手紙を送り続けている。しかも一方的にこっちを責めながら。もうわけが分からない。
私は腹が立ってやや乱暴に封筒を開けてみる。どうせまた、同じ内容だと思っていたのだが、意に反してそこには手書きでこう書かれていた。やけに神経質な字で。

「もういい。君がこっちにくればいい」

その手紙を読んだとき、辺りの空間がぐにゃりと歪んだ気がした。
なんだか私のまわりに薄い膜が張っていく感じ。そのまとわり付いた粘ついた空気に絡まれ、私は立っていられなくなる。そのまま道へと倒れこんだ。
しかし、固い道に倒れこんだと思っていた私はまたもや意に反して誰かの腕に抱きとめられた。
「やぁ、やっときたね」
耳になじむ心地よい声。それに惹かれるように私は顔を上げた。
私を抱きとめたその主は、銀髪・金目の少年だった。しかもその肌は透き通るように白く、それはまるでお高いアンティークドールのような……。まぁ、はっきり言って生きている感じがしなかった。しかしその紅い唇はそれを否定するかのように動き、言葉をつむぐ。
「まったく待ちくたびれたよ。君ときたら僕のことまるきり気づいてないみたいなんだもの」
そして私の顔に自分の顔を近づけてこちらを覗き込んだかと思うと、ふわりと微笑んだ。その笑顔に思わず見とれながらも、はたから見たらどういうふうに見えるか、と正気に返る。慌てて、まだ抱き取られたままだった体を離した。その慌て方がおもしろかったのか、彼はさっきとは違う軽い笑いをこぼす。それに文句を言おうと顔を上げた瞬間、私の体は氷ついた。
そこには見慣れた私の町、なんの変哲もない住宅街、が展開されてはいなかった。しかもさっきまで、朝だったというのに、もう夜になっている。
そこは紅いレンガのどこかポップでおもちゃくさい家が延々と並ぶ街。
「何、ここ……」
少年はあきれたように肩をすくめた。
「君こそ何言ってるんだい? 僕らの『終わらない街』じゃないか」

どうやら私の夏休みはとんでもないことになりそうだった。
つれづれなるままに勝手。 // コメント(0) // トラックバック(0) // Top

No. 5 (Mon)
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Date 2005 ・ 08 ・ 01

人身事故。

『人身事故』
ふと思う。
前の奴をここから突き落とせば、そいつは私の代わりに死んでくれるんじゃないかって。
そいつは私の持っているちっぽけな『人生』というものをすべて背負って、まるで神様のようにチャラにしてくれるんじゃないか、って。
駅のプラットフォームの黄色い線から外側にいる奴が前にいると、そんなことをつい思ってしまう。
現在、三十度を越える夏の真っ最中ていうのもあったし、きついバイトで長時間シフトだったっていうのもあったし、それより何より隣りに立っている中年の男がさっきから着メロが流れているのに携帯が見つからないらしく慌てているのが、なぜかひどくいらいらした。
早く電話とれっつうの。
電車にとびこんで死ぬのはえらく金がかかるらしい。ある死体マニアの友達が言ってた。
数千万とか?
よくわかんないけど、とびこんだ本人より遺族に迷惑がかかるらしい。電車を止めた迷惑料みたいなのを払わなければいけないんだと。いやぁ、電車は止めるもんじゃないね。しかも死に切れなかったらいやだろ。その可能性高いらしいし。
やっぱり電車にひかれたら痛いんだろうか。痛いんだろうなぁ。前の奴突き落としたら、すごい悲鳴上げるんだろうなぁ。やっぱり痛いんだろうなぁ。死ぬってやっぱり痛いのかなぁ。でも楽になれるんだよね。別に楽になれるって思うほど過酷な人生を送ってきているわけじゃないけど。むしろその人生なんてまだまだ送ったともいえない年数なんだけれども。
……一体、私も何考えてるんだか。

「まもなく、四番線に電車がまいります」

やっときたか。おまえが遅いせいで余計なこと考えただろーが。まったく。
前の奴が黄色い線の内側へと下がる。
……なあんだ、結局お前も私の救世主じゃないのか。

と、思ったら背中を強く押された。

プラットフォームにゆっくりとではないんだろうが、落ちながら私はふと思った。

私の場合、何分ぐらい電車は止まるんだろうか、って。


はい、どうも最近人身事故のせいで家に帰れなくなる率が高くなってる毒屋です。しかも夏になると多発するんですよね、これが。海とか山とか行ってくれ、頼むから……。
ちなみにこの作品はリメイク版なんですが、少しづつ変えております。知ってる人は比べてみると、毒屋の生活の変わりようが分かったり。藁。

あ、友達から「カプバトン」なるものが回ってきました。あの屋ロー、一般人には回せないもの回しやがってぇええ。爆。
「続きを読む」のところにひっそり回答しておりますので、毒屋の変態っぷりを知っている、もしくは知りたいという人だけどうぞ。核。
つれづれなるままに勝手。 // コメント(2) // トラックバック(0) // Top
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